平均律

alto, toi, toi

202007 読んだ本

記録と文書練習のために。

このご時世に出社させる会社はどうかと思うが、通勤時間がメインの読書時間なのでその点では捗った。

 

7月の読書メーター
読んだ本の数:18
読んだページ数:6199
ナイス数:4

夏の王国で目覚めない (ハヤカワ文庫JA)夏の王国で目覚めない (ハヤカワ文庫JA)
読了日:07月02日 著者:彩坂 美月

 

ある作家の未発表作品が手に入るというミステリーツアーに参加した主人公が、殺人事件に巻き込まれていくストーリー。
作中作、さらにはキャラクターたちが演じる筋書きと入れ子構造になっている。
物理的ではなく精神的クローズドサークルがきれいに描かれていると思った。
「変わらない心はあると思いますか」という言葉が繰り返し問われ、キャラクターたちがそれぞれの解釈を持っているのが印象的。


θは遊んでくれたよ ANOTHER PLAYMATE θ (講談社文庫)θは遊んでくれたよ ANOTHER PLAYMATE θ (講談社文庫)
読了日:07月03日 著者:森 博嗣

 

Gシリーズ2作目。連続飛び降り自殺事件に口紅で残されたθの謎を追う加部谷たち。
キャラクターたちの掛け合いが魅力だなと思う。
また、『四季』シリーズに登場したメタナチュラル協会なども再登場。森ミスを勧めてくれた方たちが全て真賀田四季のせいという一端がちらりと見えた一冊だった。


見晴らしのいい密室 (ハヤカワ文庫JA)見晴らしのいい密室 (ハヤカワ文庫JA)
読了日:07月04日 著者:小林 泰三

 

ミステリ色強めかと思って買ったら思い切りSFだった。「論理のアクロバット」という一文があったがその通りだと思った。
展開と構造を大枠で捉えられたらもう少し楽しく読めそう。再読が必要…‥。


τになるまで待って PLEASE STAY UNTIL τ (講談社文庫)τになるまで待って PLEASE STAY UNTIL τ (講談社文庫)
読了日:07月05日 著者:森 博嗣

 

Gシリーズ3作目。密室殺人事件!館!ということで、『笑わない数学者』『六人の超音波科学者』あたりを思い出しながら読了。
トリックはこれかなと考えながら読んでいたら道中で海月及介に思い切り否定されて思わず笑ってしまった。
どうしても犯人や動機などに焦点を当てて読みがちだが、起こった事象と背景を重視して読むべき本な気がする。
(余談だけど『笑わない数学者』のサブタイトル『MATHEMATICAL GOODBYE』がめちゃくちゃ好きだ)


ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
読了日:07月16日 著者:スティーグ・ラーソン


ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
読了日:07月16日 著者:スティーグ・ラーソン

 

世界的ベストセラーの1作目。失脚したジャーナリスト・ミカエルを中心に、過去の事件を追いつつ、現在「ミレニアム」やミカエルを陥れようとする陰謀に立ち向かっていく。登場人物数・ページ数ともに重厚長大といったところだが、徐々に群像劇めいてくる展開、点と点が繋がる展開に魅せられ後半は加速度的に読んでしまった。面白いが分厚いので、次作は気合を入れたい。


εに誓って SWEARING ON SOLEMN ε (講談社文庫)εに誓って SWEARING ON SOLEMN ε (講談社文庫)
読了日:07月18日 著者:森 博嗣

 

Gシリーズ4作目。加部谷と山吹がバスジャックに巻き込まれる。その背景には「εに誓って」という宗教団体があった、という話。
これは想像だけれど、森先生は死についてかなりフラットな考え方を持ってそうだということが窺える(気がする)。
事件の運びや展開は緊張感に包まれているが、一番印象に残ったのは山吹姉が同人オタクだったことである。ずるい。


λに歯がない λ HAS NO TEETH (講談社文庫)λに歯がない λ HAS NO TEETH (講談社文庫)
読了日:07月19日 著者:森 博嗣

 

Gシリーズ5作目。建設会社の研究所内で見つかった4つの死体。その死体は歯が全て抜かれており、現場には「λに歯がない」というカードが残されていた。
加部谷・山吹・海月の3人組のほか、今作では犀川と萌絵が深く関わってくる。S&Mから追ってきた時の萌絵の落ち着きぶりに時間の進みを感じる。どこか子供っぽいというか無茶ばかりしていた萌絵が地に足ついたことにほっとすると同時に、真賀田四季にとっての特別では無くなってきたといった印象も受けた。「特別」って難しいと他作品も思い返しながら考えさせられる。『有限と微小のパン』も読み返したい。


ηなのに夢のよう DREAMILY IN SPITE OF η (講談社文庫)ηなのに夢のよう DREAMILY IN SPITE OF η (講談社文庫)
読了日:07月20日 著者:森 博嗣

 

Gシリーズ6作目。「ηなのに夢のよう」と記されたカードと共にありえない場所での首吊り死体が発見される。
首吊り死体のトリック自体はそれほど重要でなく、取り巻く環境の変化やキャラクターたちに焦点が当てられているように思える。
紅子・保呂草・金子・反町など懐かしの面々が再登場。ここで出てきたのが後々重要な意味を持つことに気づいた時には物凄い衝撃を受けた……。
萌絵をずっと捕らえ続けていた飛行機事故に関する情報も徐々に明かされてきており、S&Mから追ってきてよかったなと思う。


星か獣になる季節 (ちくま文庫)星か獣になる季節 (ちくま文庫)
読了日:07月21日 著者:最果 タヒ

 

地下アイドルが起こした殺人を冤罪とするため、共謀関係になる渡瀬と山城。出来事そのものというより、文体が突き刺さる小説。
最果タヒ、初読だったがよかった。冷たく乾いた文体のように思えるが、余韻は情感たっぷりという印象を受けた。目が離せないといった感じ。タイトルにもなっているが「17歳は人でなしになり、そして星か獣になる季節。」が鮮烈に心を貫いた。
蛇足;17歳って特別感あるよね


煙か土か食い物 (講談社文庫)煙か土か食い物 (講談社文庫)
読了日:07月22日 著者:舞城 王太郎

 

面白かった!クセだらけの独特の口調に最初は読み進められるか……?と不安にもなったが、ページをめくるにつれそんな考えは霧散した。
スピード感が半端なく、重い話のはずなのに切り口が軽妙でサクサク読めてしまう。暴力とミステリー要素でコーティングされた中に純粋な家族愛を垣間見ることができた。「人間は死んだら煙か土か食い物」、妙に頭に残っている。


AX アックスAX アックス
読了日:07月24日 著者:伊坂 幸太郎

 

兜という殺し屋と、彼を取り巻く人々の話。淡々としているのに後味が非常に切なく、まさに伊坂といった小説だった。
どこか機械的なのに憎めない兜に愛着が湧く。すいすい読めて逆に見落としがちな中に伏線が散りばめられており、気づいた時の爽快感がクセになる。


砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない  A Lollypop or A Bullet (角川文庫)砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)
読了日:07月26日 著者:桜庭 一樹

 

「好きって絶望だよね」というセリフ、どこかで聞いたことがあると思っていたが本作だった。家庭・学校という戦場を生き延びようとする少女たちの話。「実弾」「砂糖菓子の弾丸」という例えが読み進めるにつれて実感を伴ってくる。


目薬αで殺菌します DISINFECTANT α FOR THE EYES (講談社文庫)目薬αで殺菌します DISINFECTANT α FOR THE EYES (講談社文庫)
読了日:07月26日 著者:森 博嗣

 

Gシリーズ7作目。「α」という商品名の目薬に混入した硫酸、「α」と記されたカードを持っていた死体。ギリシャ文字の事件を廻り、一連の事件に関わっていく加部谷たち。犀川や萌絵によってなされる真賀田四季の評価が恐ろしくも感じる。加部谷と海月のあれそれも目が離せないし、Gシリーズが急速に動き出したという1冊だった。


ジグβは神ですか JIG β KNOWS HEAVEN (講談社文庫)ジグβは神ですか JIG β KNOWS HEAVEN (講談社文庫)
読了日:07月26日 著者:森 博嗣

 

Gシリーズ8作目。宗教団体と絡む芸術村で起きた殺人事件。今作あたりから真賀田四季の影がどんどん大きくなってきた。紅子や保呂草まで登場しオールスターといったところ。神の概念に触れようとして、満足する・畏れるなど様々な感情が飽和した時人は救いを求める(イコール死を選ぶ)のかなとも考えた。う〜ん


キウイγは時計仕掛け KIWI γ IN CLOCKWORK (講談社文庫)キウイγは時計仕掛け KIWI γ IN CLOCKWORK (講談社文庫)
読了日:07月27日 著者:森 博嗣

 

Gシリーズ9作目。建築学会が開催される大学に、銀のプルトップが刺されたキウイが送られてくる。キウイに刻まれるのはγの文字、そして起こる殺人事件。S&M、Vと登場人物が目白押し。Gシリーズ全体を貫く大きな謎に徐々に迫っていく一面と、登場人物たちの関係性の変化が楽しめる1冊だった。最後の加部谷には青春の終わり、うつろう関係など様々な感情で胸が締め付けられ、無性に泣きたくなった。


χの悲劇 The Tragedy of χ (講談社文庫)χの悲劇 The Tragedy of χ (講談社文庫)
読了日:07月28日 著者:森 博嗣

 

Gシリーズ10作目。何も言うまい。逃げです。
興奮と呆然が波のように押し寄せてくる。


日本SFの臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人からの手紙 (ハヤカワ文庫JA)日本SFの臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人からの手紙 (ハヤカワ文庫JA)
読了日:07月31日 著者:

 

伴名練編。恋愛編・怪奇編とあるアンソロジーの恋愛編。異世界、歴史改変をはじめとした舞台で家族愛、恋愛、友愛(百合気味)が繰り広げられる。
論理と感情の融合が染み渡る。個人的には『G線上のアリア』と『ムーンシャイン』がイチオシ。また、編者・伴名練による解説が非常によかった。SFに明るくないが、ここから読み進められるというフックを与えてくれる。


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